里川の魚たちの最近のブログ記事

里川の魚たち第6回目はドジョウです。ドジョウ科の魚で、何でも食べる雑食性です。
繁殖期は夏前で、雄は雌の身体にぎゅっと絡まりながら放卵・放精が行われます。

一般的に、魚は水中に溶け込んだ酸素をエラから取り入れる「エラ呼吸」を行うの
ですが、ドジョウはエラ呼吸だけでなく、水面から口を出して空気を吸い込み、
腸から酸素を取り込む「腸呼吸」も行っています。水中に酸素が乏しいような
場所や時期でも生き抜くために獲得された特徴です。

彼らの生活において、水田は非常に重要です。ドジョウは、水田とつながる水路など
を通って水田に入り、水田で産卵を行います。昔は田んぼの水の出口にカゴのような
わなを仕掛けておいて、ドジョウを捕獲していたそうです。かなり美味しい魚です。

■長野大学から車で20分ほどの室賀地区を流れる室賀川で採集されたドジョウです。
川岸の草のあたりを、たも網でがさがさ探ると、たくさん獲ることができました。

ドジョウ.JPG

















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里川の魚たち第5回目はカジカです。カジカ科に属するこの魚は、里川の中では
上流域に分布し、時々イワナ釣りをしていると釣れたりすることがあります。肉食
性で、水生昆虫や時には小魚を食べることもあります。

ヨシノボリと同じく「イクメン」で、繁殖期である早春に、雄は石の下に巣を作り、
雌が巣石の天井に卵を産みつけた後、雄だけがふ化するまで卵を育てます。

私はカジカをはじめて見たときから、なんだが鳥に似ているなあと感じていたの
ですが、その理由はカジカの大きな胸びれが、鳥の翼のように見えるからかも
しれません。いつも流れがある川の中で、こんなに大きな胸びれは邪魔になる
のでは? と思うのですが、あまり無駄なものは、基本的には進化しないのが生物
の世界。この大きな胸びれを、彼らが生活の中でどんなふうに使っているのか、
今後調べてみたいテーマの一つです。

大変美味しい魚で、よく食用にされます。私は、唐揚げやカジカ酒(炭火で焼いた
カジカを日本酒に入れて作る)などが好きです。


昨年の夏の佐渡島でのゼミ合宿の時に、島内の小川で採集されたカジカの
写真です。
カジカ佐渡.JPG

















長野大学から車で20分ほどの距離にある武石川で観察できた、カジカの卵
です(掘 邦昌さん撮影)。「いくら」みたいで美味しそう?
カジカの卵.jpg
















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「里川の魚たち」第4回目は、コイです。日本全国に分布していますが、昔から移植が
盛んな魚であるため、自然状態でどのように分布していたのかは、よく分かっていません。
食性は雑食性で、水生昆虫や貝類、水草など、何でも食べてしまいます。

繁殖期は4〜7月で、水草に卵を産みつけます。1回の産卵数は20〜60万粒と、かなりの
数です。一般的に魚の卵や子どもは小さく、また動きも遅いので(卵はそもそも動けませんが)、
いろいろな動物の格好の餌食となります。ヨシノボリのように子育ては行わないコイですが、
これだけたくさんの卵を産めば、その内の何割かは、無事に大人にまで育つに違いありません。

長野県のように、海に面していない内陸の地では、コイは昔から重要なタンパク源として利用
されてきた食用魚です。長野大学のある上田市でもよく利用されていますし、お隣の
佐久市では「佐久鯉」がブランドとして全国的にも有名になりつつあります(佐久鯉については
佐久商工会議所のホームページも参照のこと)。鯉こくやうま煮、あらいや刺身などにして
食べられています。私は特に刺身が好きです。海の魚ではあまり味わえない、少しもちっとした
食感を楽しむことができます。

私たち日本人にとって、コイは親しみのある魚ですが、意外にも「世界の侵略的外来種
ワースト100」に選ばれた、世界から見るとちょっとやっかいな生き物です。

【外来種】
自然の分布域の外に、(意図的・非意図的に関わらず)人為的に導入された種のこと。
しばしば在来の生き物に悪影響を及ぼす。外来種についてより詳しく知りたい方はこちら
参照のこと(環境省のホームページです)。


【世界の侵略的外来種ワースト100】
国際自然保護連合(IUCN)が定めた、本来の生育・生息地以外に侵入した外来種の中で、
特に生態系や人間活動への影響が大きい生物のリストのこと。世界の侵略的外来種ワースト
100についてはこちらも参照のこと(IUCN Japanのサイトです)。


長野大学の近くの産川で採集された30cmオーバーのコイです。産川は川幅が4〜5mの
小さな川なのですが、淵には全長が60cmを越えるほどの、かなりの大物がひそんでいます。
CA3I0385.JPG



















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「里川の魚たち」第3回目は、ウグイです。この魚は、ほぼ日本全国の
河川や湖沼に生息するコイ科魚類です。大きいものは40cmを越える
ほどに成長します。

ウグイは集団で産卵を行う魚です。初夏、派手な赤色を示すように
なったたくさんの雄と雌が川の瀬に集まって産卵します。

この産卵習性を利用した伝統漁法が、千曲川の初夏の風物詩である
「つけば漁」です。ウグイは瀬ならどこでも産卵するわけではなく、
こぶし大の浮き石(川の底の礫に埋まっていない石)がたくさんある
場所で好んで産卵します。このウグイが卵を産みたくなる場所を
人が用意しておき(これをつけばと呼びます)、そこに集まったウグイを
捕らえるのがつけば漁です。

つけばは、漁師の方によって少しずつ作り方が異なっています。また、
これまでの経験や勘を頼りに、毎年つけばの構造や位置を作りかえるそうです。



春先に産川で採集されたウグイです。色づき始めています。とても美味しい魚です。
ウグイ.JPG






















いつもお世話になっている漁師さんのつけばです。写真の右側の枠内に、ウグイが
卵を産みたくなるような場所を作り、ウグイをおびき寄せます。毎年学生と一緒に
見学(&ほんのちょっぴり漁のお手伝い)をさせて頂いています。
つけば.JPG






















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「里川の魚たち」第2回目は、オイカワです。コイ科の魚であるオイカワは、
北陸・関東地方以西の本州や、四国の瀬戸内側などの川や湖に
分布しています。

繁殖期である5〜8月にかけて、雄の身体は鮮やかな青緑色と赤色に
染まります。この派手な婚姻色は、雄の繁殖準備が整ったことの合図
です。婚姻色の出た雄は、川の平瀬の砂礫がある場所になわばりを
はり、他の雄を追い払います。雌は、雄のなわばりにやってきて産卵を
します。ヨシノボリとは異なり、オイカワは雄どころか雌も子育てはしません。

これまでオイカワの雄の婚姻色がどんな意味を持っているのか
よくわかっていなかったのですが、私の研究から、婚姻色の面積が
広い雄ほど、雌に好まれることが分かりつつあります。

面白いことに、全ての雄が婚姻色をハデに示すわけではなく、
婚姻色の面積が広い雄からそうでもないものまで、ばらつきが
あります。

婚姻色を出すために、雄は雄性ホルモン(雄らしくなるためのホルモン。
人間にもあります)を、たくさん分泌する必要があるのですが、
このホルモンは、病原菌に対する免疫力を低下するというやっかいな
特徴も持っています。そのため、もともと病気に対する抵抗性の高い
雄しか、たくさん雄性ホルモンを分泌して、婚姻色を表すことができない
ようです。

雌は、雄の婚姻色の面積の広さを見て、病気に強い雄を選んでいるの
かもしれません。
※オイカワの婚姻色に関する研究に興味のある方はこちらもお読み下さい
(科学研究費補助金成果報告書をダウンロードできます)。


繁殖期に、長野大学の近くを流れる産川で採集されたオイカワの雄です。
派手な婚姻色が出ています。アゴの下などにあるぶつぶつは「追星(おい
ぼし)」と呼ばれる突起物で、繁殖期のみに発達します。
雄.JPG




















雌の写真です。雄に比べると地味な色合いです。
雌.JPG



















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長野大学の周辺には産川や尾根川など、やがて千曲川に
つながる里川(人里を流れる身近な川)がたくさんあります。

ゼミの調査活動でフィールドとなることが多いこれらの里川には、
陸上から川面を見ただけでは想像できないくらい、たくさんの魚
たちが住んでいます。このブログでは、学生たちの活動だけでなく、
これらの里川の魚たちも(不定期で)紹介していきたいと思います。

「里川の魚たち」第1回目はトウヨシノボリです。トウヨシノボリは、
琉球列島を除く、日本全国の河川や湖沼に生息するハゼ科魚類です。

魚類の多くは子育てを行いませんが、このトウヨシノボリは、雄が卵が
ふ化するまでの間、保護を行います。繁殖期である初夏から夏にかけて、
雄は石の下に穴を掘って巣を作り、雌が巣石の天井に卵を産みつけ後、
巣に閉じこもって卵を狙う敵を追い払ったり、胸びれで卵に新鮮な水を
送ったりなど、まめまめしく世話をします。

トウヨシノボリを含め、日本には10種類以上のヨシノボリが生息して
います。私はこれらヨシノボリ類の研究をこれまでメインに行ってきました。
※興味のある方は「魚類の社会行動3」(海游舎)をお読み下さい。この本の
第3章に私が執筆したヨシノボリの話が載っています。

ヨシノボリ類は、基本的に雌よりも雄の方が身体が大きく、また背びれが
長く伸びるという雌雄差(性的二形と呼びます)を持っています。

私たち人間だけでなく、他の生き物も異性に対する好みを持つものが
たくさんいるのですが、このトウヨシノボリの雌は背びれの長い雄が好きに
なるようです(Suk & Choe. 2002. Journal of Fish Biology. 61: 899-914)。

あなたの家の近くの川にも、たぶんトウヨシノボリが住んでいるはずです。
ゆっくりとした動きと、愛嬌のある顔をしたトウヨシノボリに会いに、里川に
出かけてみて下さい。


現在研究室の水槽で、トウヨシノボリを飼育しています。これは
雄の写真です。顔がごつごつしています。

雄.jpg


















雌です。繁殖期はまだまだ先なのですが、水温と日照条件を
繁殖期のものにして飼育しているせいか、卵を産む準備ができ
たあかしである青色の婚姻色がお腹に出始めています。
雌2.jpg

















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