2013年3月5日より静岡で開催された第60回日本生態学会大会に参加してきました。
今回は、私の科研費研究のテーマである「魚類のメスの性的形質の進化機構の解明」に
関わる研究成果の一部を発表しました。ここでは、その研究内容について少し
紹介したいと思います。
一般的に、動物ではメスよりもオスの方が派手な飾りを持つものが多く見られます(例えば、
クジャクのオスの派手な目玉模様は有名ですよね)。このようなオスの派手な飾りは、生きて
いく上ではデメリット(外敵に見つかりやすい、行動するのに邪魔等々)となります。
キビシイ自然界で生活している動物たちに、なぜこんな派手な飾りが進化したのかは、
昔は謎だったのですが、最近はこのような飾りは異性をめぐる同性同士の争いに有利であったり、
異性に好まれるから進化してきたという「性選択理論」でうまく説明されるようになりました。
この性選択理論の研究が、私のメインテーマです。
動物の世界では、オス同士がメスをめぐってけんかをし、メスが交尾相手を選ぶという
パターンが一般的です。そのため、オスに派手な飾りが進化するというのは、特に
不思議なことではありません。
しかし、オスがけんかをし、メスがつがい相手を選ぶ動物において、オスだけでなくメスも派手な
飾りを持つものが数多く存在しています。このメスの派手な飾りが、なぜ進化してきたのかは
実はよく分かっておらず、進化生物学の分野でもホットな話題の1つです。
そこで、現在、メスに派手な婚姻色が表れる(産卵できるようになったメスのお腹が青く
なります)ハゼ科のトウヨシノボリ(最近、和名がオウミヨシノボリに変更されました)を
対象に、メスの婚姻色にどんな意味があるのかを調べています。トウヨシノボリの生態
については、このブログで以前に紹介していますので、そちらも参照下さい。
まずすぐに思いつくのが、「派手な婚姻色を持つメスはオスに好かれるのでは?」という
仮説です。トウヨシノボリのメスにとって相手は誰でもよいわけではなく、背びれの長いオスを
好きになる[最近私が出した論文(Takahashi 2013)では、オスの身体の大きさもメスの好みと
関係している可能性について触れています]ことが分かっているのですが、もしかすると
オスの方にもメスに対する好みがあるのかもしれません。
そこで、水槽実験(メス2匹とオス1匹を水槽に入れ、オスに求愛される時間が長いメスを
そのオスは好んだと判断)でメスに対するオスの好みを調べてみたのですが、メスの婚姻色も
含め、オスは特にメスに対する選り好みを行わないという結果がでました。
よって、少なくとも「メスの婚姻色はオスに好まれるから進化してきた」という仮説は
正しくないようです。
ヨシノボリの仲間では、メスは婚姻色を出すものが多いのですが、婚姻色が
表れたメスはけんかはほとんどしないため(婚姻色が出ていないときは、オスと
同じようにメス同士もけんかをします:Takahashi 2000)、メスの婚姻色がオスをめぐる
メス同士の直接的なけんかと関係しているとは考えにくいです。
今回は、メスに対するオスの好みに焦点を当てたシンプルな実験系で研究を行った
たのですが、もう少し細かく調べていく必要がありそうです。今後は、自然状態に
近い実験系によって、婚姻色を出しているメスと出していないメス、そしてオスの
振る舞いをつぶさに観察し、お互いの関係性を調べることで、メスの飾りが進化する
メカニズムを明らかにしていきたいと考えています。
■今回の学会会場であるグランシップ静岡の入り口。
■静岡といえば富士山。やはり存在感があります。
■発表用のポスターの前に立つ私。発表を聴きに来てくれた方に撮影して
頂きました。魚類の研究者だけでなく、甲殻類やは虫類の研究者からも
有益なコメントを頂くことができました。
今回は、私の科研費研究のテーマである「魚類のメスの性的形質の進化機構の解明」に
関わる研究成果の一部を発表しました。ここでは、その研究内容について少し
紹介したいと思います。
一般的に、動物ではメスよりもオスの方が派手な飾りを持つものが多く見られます(例えば、
クジャクのオスの派手な目玉模様は有名ですよね)。このようなオスの派手な飾りは、生きて
いく上ではデメリット(外敵に見つかりやすい、行動するのに邪魔等々)となります。
キビシイ自然界で生活している動物たちに、なぜこんな派手な飾りが進化したのかは、
昔は謎だったのですが、最近はこのような飾りは異性をめぐる同性同士の争いに有利であったり、
異性に好まれるから進化してきたという「性選択理論」でうまく説明されるようになりました。
この性選択理論の研究が、私のメインテーマです。
動物の世界では、オス同士がメスをめぐってけんかをし、メスが交尾相手を選ぶという
パターンが一般的です。そのため、オスに派手な飾りが進化するというのは、特に
不思議なことではありません。
しかし、オスがけんかをし、メスがつがい相手を選ぶ動物において、オスだけでなくメスも派手な
飾りを持つものが数多く存在しています。このメスの派手な飾りが、なぜ進化してきたのかは
実はよく分かっておらず、進化生物学の分野でもホットな話題の1つです。
そこで、現在、メスに派手な婚姻色が表れる(産卵できるようになったメスのお腹が青く
なります)ハゼ科のトウヨシノボリ(最近、和名がオウミヨシノボリに変更されました)を
対象に、メスの婚姻色にどんな意味があるのかを調べています。トウヨシノボリの生態
については、このブログで以前に紹介していますので、そちらも参照下さい。
まずすぐに思いつくのが、「派手な婚姻色を持つメスはオスに好かれるのでは?」という
仮説です。トウヨシノボリのメスにとって相手は誰でもよいわけではなく、背びれの長いオスを
好きになる[最近私が出した論文(Takahashi 2013)では、オスの身体の大きさもメスの好みと
関係している可能性について触れています]ことが分かっているのですが、もしかすると
オスの方にもメスに対する好みがあるのかもしれません。
そこで、水槽実験(メス2匹とオス1匹を水槽に入れ、オスに求愛される時間が長いメスを
そのオスは好んだと判断)でメスに対するオスの好みを調べてみたのですが、メスの婚姻色も
含め、オスは特にメスに対する選り好みを行わないという結果がでました。
よって、少なくとも「メスの婚姻色はオスに好まれるから進化してきた」という仮説は
正しくないようです。
ヨシノボリの仲間では、メスは婚姻色を出すものが多いのですが、婚姻色が
表れたメスはけんかはほとんどしないため(婚姻色が出ていないときは、オスと
同じようにメス同士もけんかをします:Takahashi 2000)、メスの婚姻色がオスをめぐる
メス同士の直接的なけんかと関係しているとは考えにくいです。
今回は、メスに対するオスの好みに焦点を当てたシンプルな実験系で研究を行った
たのですが、もう少し細かく調べていく必要がありそうです。今後は、自然状態に
近い実験系によって、婚姻色を出しているメスと出していないメス、そしてオスの
振る舞いをつぶさに観察し、お互いの関係性を調べることで、メスの飾りが進化する
メカニズムを明らかにしていきたいと考えています。
■今回の学会会場であるグランシップ静岡の入り口。
■静岡といえば富士山。やはり存在感があります。
■発表用のポスターの前に立つ私。発表を聴きに来てくれた方に撮影して
頂きました。魚類の研究者だけでなく、甲殻類やは虫類の研究者からも
有益なコメントを頂くことができました。