2011年12月アーカイブ

「里川の魚たち」第3回目は、ウグイです。この魚は、ほぼ日本全国の
河川や湖沼に生息するコイ科魚類です。大きいものは40cmを越える
ほどに成長します。

ウグイは集団で産卵を行う魚です。初夏、派手な赤色を示すように
なったたくさんの雄と雌が川の瀬に集まって産卵します。

この産卵習性を利用した伝統漁法が、千曲川の初夏の風物詩である
「つけば漁」です。ウグイは瀬ならどこでも産卵するわけではなく、
こぶし大の浮き石(川の底の礫に埋まっていない石)がたくさんある
場所で好んで産卵します。このウグイが卵を産みたくなる場所を
人が用意しておき(これをつけばと呼びます)、そこに集まったウグイを
捕らえるのがつけば漁です。

つけばは、漁師の方によって少しずつ作り方が異なっています。また、
これまでの経験や勘を頼りに、毎年つけばの構造や位置を作りかえるそうです。



春先に産川で採集されたウグイです。色づき始めています。とても美味しい魚です。
ウグイ.JPG






















いつもお世話になっている漁師さんのつけばです。写真の右側の枠内に、ウグイが
卵を産みたくなるような場所を作り、ウグイをおびき寄せます。毎年学生と一緒に
見学(&ほんのちょっぴり漁のお手伝い)をさせて頂いています。
つけば.JPG






















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「里川の魚たち」第2回目は、オイカワです。コイ科の魚であるオイカワは、
北陸・関東地方以西の本州や、四国の瀬戸内側などの川や湖に
分布しています。

繁殖期である5〜8月にかけて、雄の身体は鮮やかな青緑色と赤色に
染まります。この派手な婚姻色は、雄の繁殖準備が整ったことの合図
です。婚姻色の出た雄は、川の平瀬の砂礫がある場所になわばりを
はり、他の雄を追い払います。雌は、雄のなわばりにやってきて産卵を
します。ヨシノボリとは異なり、オイカワは雄どころか雌も子育てはしません。

これまでオイカワの雄の婚姻色がどんな意味を持っているのか
よくわかっていなかったのですが、私の研究から、婚姻色の面積が
広い雄ほど、雌に好まれることが分かりつつあります。

面白いことに、全ての雄が婚姻色をハデに示すわけではなく、
婚姻色の面積が広い雄からそうでもないものまで、ばらつきが
あります。

婚姻色を出すために、雄は雄性ホルモン(雄らしくなるためのホルモン。
人間にもあります)を、たくさん分泌する必要があるのですが、
このホルモンは、病原菌に対する免疫力を低下するというやっかいな
特徴も持っています。そのため、もともと病気に対する抵抗性の高い
雄しか、たくさん雄性ホルモンを分泌して、婚姻色を表すことができない
ようです。

雌は、雄の婚姻色の面積の広さを見て、病気に強い雄を選んでいるの
かもしれません。
※オイカワの婚姻色に関する研究に興味のある方はこちらもお読み下さい
(科学研究費補助金成果報告書をダウンロードできます)。


繁殖期に、長野大学の近くを流れる産川で採集されたオイカワの雄です。
派手な婚姻色が出ています。アゴの下などにあるぶつぶつは「追星(おい
ぼし)」と呼ばれる突起物で、繁殖期のみに発達します。
雄.JPG




















雌の写真です。雄に比べると地味な色合いです。
雌.JPG



















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長野大学の周辺には産川や尾根川など、やがて千曲川に
つながる里川(人里を流れる身近な川)がたくさんあります。

ゼミの調査活動でフィールドとなることが多いこれらの里川には、
陸上から川面を見ただけでは想像できないくらい、たくさんの魚
たちが住んでいます。このブログでは、学生たちの活動だけでなく、
これらの里川の魚たちも(不定期で)紹介していきたいと思います。

「里川の魚たち」第1回目はトウヨシノボリです。トウヨシノボリは、
琉球列島を除く、日本全国の河川や湖沼に生息するハゼ科魚類です。

魚類の多くは子育てを行いませんが、このトウヨシノボリは、雄が卵が
ふ化するまでの間、保護を行います。繁殖期である初夏から夏にかけて、
雄は石の下に穴を掘って巣を作り、雌が巣石の天井に卵を産みつけ後、
巣に閉じこもって卵を狙う敵を追い払ったり、胸びれで卵に新鮮な水を
送ったりなど、まめまめしく世話をします。

トウヨシノボリを含め、日本には10種類以上のヨシノボリが生息して
います。私はこれらヨシノボリ類の研究をこれまでメインに行ってきました。
※興味のある方は「魚類の社会行動3」(海游舎)をお読み下さい。この本の
第3章に私が執筆したヨシノボリの話が載っています。

ヨシノボリ類は、基本的に雌よりも雄の方が身体が大きく、また背びれが
長く伸びるという雌雄差(性的二形と呼びます)を持っています。

私たち人間だけでなく、他の生き物も異性に対する好みを持つものが
たくさんいるのですが、このトウヨシノボリの雌は背びれの長い雄が好きに
なるようです(Suk & Choe. 2002. Journal of Fish Biology. 61: 899-914)。

あなたの家の近くの川にも、たぶんトウヨシノボリが住んでいるはずです。
ゆっくりとした動きと、愛嬌のある顔をしたトウヨシノボリに会いに、里川に
出かけてみて下さい。


現在研究室の水槽で、トウヨシノボリを飼育しています。これは
雄の写真です。顔がごつごつしています。

雄.jpg


















雌です。繁殖期はまだまだ先なのですが、水温と日照条件を
繁殖期のものにして飼育しているせいか、卵を産む準備ができ
たあかしである青色の婚姻色がお腹に出始めています。
雌2.jpg

















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